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〒167-0054 東京都杉並区松庵2丁目19-15

避妊去勢に関して

避妊去勢に関して

<全ての手術を安全に行うために>

・術前検査

犬猫の避妊、去勢手術は手術時間も短く、若い動物で行われることが多いこともあり、簡単な手術というイメージが抱かれがちですが、全身麻酔を必要とする手術であり、女の子の場合お腹を開けて行う開腹手術であることを改めて考えると、決して軽んじてはならない手術であるといえます。

また若いから、健康そうだからといって何かしらの病気を抱えていないとは言えません。経験を積んだ獣医師でも外見からは知ることの出来ない問題が無いか検査をすることによって、安全に行われるべき手術をより安全に行うために術前検査が必要なのです。私たちは手術を行う前にその子の健康状態をより良く知るために白血球、赤血球、血小板といった血球計算、肝臓や腎臓などの状態を調べる生化学検査、眼では見えない心臓や肺の状態を調べるレントゲンそして心臓の働きを調べる心電図の検査を行います。

手術

麻酔

手術は全身麻酔のもとで行います。

当院で手術中の安全性を高めるために手術中は麻酔に習熟した獣医師が麻酔を行います。麻酔の方法は、動物の気道に専用のチューブを挿入してそこに酸素と麻酔ガスを注入する、吸入麻酔という方法を用います。この方法だと呼吸の経路が管理しやすいため、呼吸が止まって酸素が体の中に取り込めないという事故を防ぐことができます。また手術中は専用の機械で心電図、血圧、体温、体内の酸素の状態、麻酔の深さ等々種々のモニターを行いわずかな状態の変化も見逃さないようにし、変化があった場合は直ちに対応できる体制を整えています。

 

避妊手術

全身麻酔の下で両側の卵巣、または卵巣と子宮を摘出します当院では動物の負担をできる限り少なくするため2005年に腹腔鏡を関東でいち早く導入し、わずか3〜5mmの小さな傷2〜3ヶ所での避妊手術を開始しました。

腹腔鏡手術は、人間と同様に動物でもからだに優しいことが論文で証明されています。しかし、手法が一般開腹手術と大きく異なるため、術者は海外および国内でトレーニングを受けた獣医師のみが執刀いたします。現在では当院での避妊手術は腹腔鏡手術を基本にご提案させて頂いております。

 

去勢手術

全身麻酔の下で両側の精巣(睾丸)を摘出します。傷も小さく7〜10日で抜糸が可能で、抜糸の後は通常の生活に戻れます。正常な精巣の手術は基本的な手術のひとつですが、私たちはこのような手術においても、安全・安心を第一に最新の自動結紮装置などを用いて行っています。

精巣が陰のうの中でなく、皮下やお腹の中に留まっていることを停留睾丸と呼びます。停留睾丸の動物は、正常な動物に比べて8倍腫瘍になる可能性が高いと言われていますが、これも去勢手術で予防することができます。残念ながら、お腹の中に精巣がある場合は女の子と同じように開腹手術をしなくてはなりません。しかも、ある程度傷を大きくしないと、膀胱や前立腺を傷つける可能性があり危険であると海外の論文で発表されています。当院では、お腹の中に睾丸が残っている動物の手術に腹腔鏡を使用しています。腹腔鏡を使用すれば、わずか1cm程度の小さな傷(通常1ヶ所)で、精巣を見つけ出し他の臓器を傷つけることなく手術が行えます。もちろん手術後の痛みも少なく、手術後の回復も通常の手術とは全く異なります。より安全で動物に負担の少ない手術を行うこと、これが私たちの手術に対する考えです。

 

抜糸

術後7‐10日切開した皮膚が完全に治癒したことを確認したのち、皮膚を縫合した糸を除去します。

避妊去勢の目的

避妊・去勢手術の大きな目的は、動物自身の健康とQOLを向上させ、家族の一員として人間社会の中で長く幸せに暮らすためです。そしてもうひとつは、望まれない不幸な動物を増やさないためです。犬や猫が人と生活を共にするにあたって避けて通れないのは人間社会との共存です。なかでも人間との大きな違いの一つが犬や猫が多産であり、最大年に2度の妊娠・出産が可能であるという事実が毎年殺処分される犬猫の多さからも知られているように、社会的に大きな問題であるといえます。残念なことに私たちの力ではこの子たちすべてに温かい家を提供してあげることができません。また、避妊去勢を行わないことで、しつけが難しくなったり、行動上の問題が生じて人と暮らせなくなる子も少なくありません。このような悲しい事態を避けるためにも避妊去勢手術は必要と考えます。

 

期待できる効果

健康

男の子なら、精巣の腫瘤、前立腺の病気の予防に効果があります。女の子なら、子宮や卵巣の病気、乳腺腫瘍、偽妊娠などの予防に効果があります。なかでも最も効果が期待できるのは乳腺腫瘍の予防です。データによると、初回発情前に避妊手術を行うと、乳腺腫瘍を99.5%予防することができるといわれています。この予防効果は発情回数が増えるごとに少なくなり、発情が4回以上になるとほとんど予防効果が望めなくなります。また、2.5才を過ぎても同様に効果が無くなります。猫も犬と同様に早期手術が乳腺腫瘍の予防に繋がります。6ヶ月までに避妊手術を行うと91%予防可能ですが、2才を過ぎてしまうと効果は期待できなくなります。

 

行動

繁殖できない環境の下での、マーキングやマウンティングなどの行動は、動物にとっても人間にとってもストレスになります。生成熟前の手術によりこうした行動を予防して動物と家族がより良い関係を築くことが可能になります。

 

社会

日本では毎年引き取り手のない多くの動物が、人間の手で処分されています。望まれない繁殖を防ぎ、捨てられる動物を減らすことは、社会的な摩擦を減らして犬や猫が人間社会で暮らしやすくなると同時に、「殺処分」という、子供たちの教育的に望ましくない方法を減らし、またこれらに係る費用(税金)を減らすことができることによって社会に役立ちます。

 

最適な時期

去勢・避妊手術は未成熟のうちに行うと、しつけがしやすくなるという効果もあり、小型犬、中型犬、猫ではワクチンが終わってから生後半年以内、大型犬では骨の成長が止まる生後10ヶ月位からが目安になります。当院では種別、健康、成長状態などから、最適な時期をご提案するようにしています。まずは遠慮なく相談ください。

 

安全性について

残念ながら去勢・避妊手術の事故件数は、恐らく手術全体で最も多いのが現状です。もちろん最も多く行われている手術であるということが一番の理由だと思います。しかし一方では、去勢・避妊手術は簡単な手術だという間違った認識が、飼い主様だけではなく獣医師の側にも一部で存していることが、最も大きな原因であると言われています。去勢・避妊手術は簡単な手術ではなく、件数が多い故に最も慣れた手術と評するのが正しいかも知れません。そして、交通事故と同じように慣れや油断が事故につながっているのではないでしょうか。当院では安全な手術を行うため、手術前の徹底した検査、手術室の衛生管理、最新鋭の設備、安全な麻酔管理、熟練した手術者による執刀、1日の手術件数の制限などを常に実行、どんな小さなことも徹底し、妥協を許さず行っています。当院の手術に対する考えは、すべての手術に共通です。

Q&A

Q.手術を受けると本当に太りやすくなりますか?

これは規則正しい食事、適切なカロリーコントロールと運動で対応することができます。

 

Q.まれに尿失禁が起こると聞きますが?

ホルモン反応性尿失禁が起こる可能性がありますが、これも適切な治療でコントロールすることができます。

 

Q.性格も変わってしまうのでしょうか?

攻撃的な行動が減り、温和で従順になったと感じることが多いと思いますが、基本的に動物本来の性質が変化することはありません。去勢・避妊手術の獣医学的メリットは、デメリットをはるかに上回ります。不安なことは、何でも当院にご相談ください。

 

Q..麻酔は危険ではありませんか?

20年以上昔、動物の麻酔は静脈や筋肉内に投与する「注射麻酔」で手術を行うことが多くありました。このような麻酔を用いた手術では動物の呼吸状態を安全に維持することが難しかったり、麻酔の深さを調節しにくいこともあり、麻酔に関わるトラブルもありました。現在では麻酔薬や麻酔方法(吸入麻酔)進歩、麻酔中の動物の状態をより詳しく知るためのモニター機器、麻酔技術そのものの進歩とともに、麻酔中の事故は大幅に減少しています。当院では麻酔に当たって高度な技術を有する麻酔担当獣医師が手術中の麻酔を行います。また、各種麻酔モニターなどを使用して不測の事態にも対応できる体制で手術を行います。さらにどんなに簡単と思われるような手術でも常に麻酔医、執刀医、助手、補助等数人の獣医師・愛玩動物看護師・動物看護助で行うことによって、人為的に起こりうる事故が最小になるよう留意しています。